あんつぁんの風の吹くまま

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数字の意味を教えてくれたおもちゃ屋さん

 五月末というのは三月を期末としている会社の法人税確定申告期日である。大手は連結決算などがあってまた監査法人などがいろいろやるので、また別の世界なのだが、商店などの小さな会社でも利益が出ればしっかり税金をもっていかれてしまうので、やはり税理士のお世話になるしかない。

 本当は、税金でもっていかれなくても其の分税理士への顧問料を払わなければならないのだったら同じではないかと思うのだが、良い税理士というのは経営コンサルタントの役目もあり社外役員的な存在なのだ。

 若いころはお天道さまの下で働くのが好きで、大学は出たけれども定職に就かず、今で云うフリーターみたいな仕事ばかりやっていた。従って経理みたいなそろばんと数字ばかり書いている仕事などまっぴらゴメンと、ある意味軽べつすらしていたのだが、コンピューターが出来るということで、父の知り合いの会計事務所で働かされるハメになった。

 当時は、コンピュータといっても穴を開けたカードかテープを端末機に読み込ませて、中央の大型コンピューターで電算処理するシステムだったのだが、ようやく端末機に8インチのディスクがつくというので大騒ぎしていた時代だった。確かにキーボードで処理できるということは画期的なことだった。

 こちらは経理のヶの字も知らない。ただコンピュータに入力しやすいように伝票を整理するぐらいの仕事しか出来なかったのだが、ある一軒のおもちゃ屋さんを担当することになった。そこはお店の人がもう殆ど伝票を作成しており、其れをチェックして端末に入力するだけの簡単な仕事だった。ところが、出来上がった試算表を見てみると毎月毎月赤字が出ている。あまり心配になったので前の担当者に聞くと、大丈夫だという。期末にはちゃんと黒字になるので、なるべく税金が出ないようにチェックしておいてねと言うだけだ。

 ちょうどルービックキューブが流行っていた時期で、また、ガンダムのようなロボットのおもちゃも出てきて売れ始めた。それでも赤字になっている。いよいよ心配になって、とうとう其の店の社長さんに聞いてみた。社長いわく、年末年始は仕入れることが出来ないので、在庫を一杯増やしているだけだから構わないという。

 そんなものかと信じられなかったが、年が明けて二月に会計処理をしてみてビックリ仰天。クリスマスと正月だけで年間の売上の七割を超えてしまっているではないか。真っ黒な大黒字になってしまった。社長が文句を言いに来た。税金を払いたくないからあんたに頼んでいるのにどうしてくれるんだと言うのだ。

 そう言われても返す言葉が無い。しかし、こちらは毎月滞りなく試算表を作って提出している。後はどれだけ売れるかは社長さんの判断ではないか。とは言え、会計事務所に籍を置いている以上、数字だけをこしらえてお持ちしているだけですとは言えなかった。一応分からないなりにも数字は見ていたし、店の動きも見てはいた。

 そこでこう反論した。ルービックキューブの流行を社長さんは予測できましたか。子供ではなく大人がおもちゃを買いに来ることを予測できましたか。社長さんに予測できないことは私にも予測できません。ただ言えることは、此れからもこの流れはずっと続くと思います。大人も遊べるゲームが流行って来期はもっともっと利益が出ると思います。税務対策はうちの税理士の先生として下さいと。

 社長はにやっと笑って言った。来期の予想までするとは大したものだ。あんたの言うことを信じよう。
 
 私はその後すぐに会計事務所を辞めてしまったが、このおもちゃ屋さんを担当したことで、経理の大切さを知り、また経営というものを理解した。
 
 このおもちゃ屋さんは今も流行っている。
 
by antsuan | 2005-05-31 19:35 | 身の回り・思い出 | Comments(0)