あんつぁんの風の吹くまま

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映画「シェーン」の解説 (その三)

(あの淀川長治さんが映画「シェーン」のプログラムに寄稿した解説「シェーンの舞台たるワイオミングとそしてこのアメリカの開拓の足跡」の抜粋です。)

 それで「シェーン」はもちろんウェスタァン映画の中でもベスト・ワンに数え上げる人もあるほどのウェスタァン映画でありながら、やっぱりジョン・フォードのウェスタァンと違って、その演出のきめが劇的にとても細やかなのである。
 ジョン・フォードのウェスタァンは、アメリカ開拓民のなかに早くからしみ込んだアイルランド気質・・・・負けじ魂が強くて、人情に脆くて、喧嘩ばやくて・・・という男臭いその時代の生一本が善良な人情肌でにじみ出ているのであるが、スティーヴンスはもっと学究的である。もっとドラマチックなのである。しかもフォードは生まれながらの映画人肌でフィルムの中にうづまっている面白さ。これに比べスティーヴンスは「アメリカ」この新しく生まれた国をもう少し現代感覚を持って見つめていると云えなくはないのである。彼が「シェーン」のあとで「ジァイアンツ」を完成させたことがさらにそれを意味づけて面白い。
 「シェーン」によって開拓されたその広大なアメリカ西部にやがて石油が噴き出して、アメリカは富める国になり変わった。そのアメリカの悲劇を、彼は「シェーン」の前に「陽の当たる場所」で取り上げている。
 云わば「シェーン」「ジャイアンツ」「陽の当たる場所」はこの時代の順でスティーヴンスのアメリカ三部作とも言えなくもない。
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 あのジョーイ少年が今も生きていたら、「アイ・リメンバー・シェーン」・・・儂はなぁ、シェーンと云う偉い男を知っているんだよ、忘れはせん、あの男をなぁ・・・と、そう云っているとするとどうであろう。そして実にジョージ・スティーヴンスの映画「シェーン」こそはそれを今日のアメリカ人にそう話しかけているわけである。あの時代、あの頃のアメリカ人たち、そして今日のアメリカこそはあのジョーイ坊やの両親たちの手で出来上がったんだぞ・・・と。
                              おわり
*昭和三十七年四月十一日発行 東宝事業部出版課 日比谷映画劇場 「シェーン」のカタログより

 映画を通して、人生とは何かを説いてくれた淀川長治さんの名解説。人生の年輪を数えた人の熱き情熱が伝わってきます。私も淀川長治さんの気持ちに一歩でも近づけるようなブログを書いて行きたいと思います。
by antsuan | 2005-05-22 06:44 | 身の回り・思い出 | Comments(3)
Commented by knaito57 at 2005-05-22 21:44
いつもは主役の気分になりきって見るのに「シェーン」ではヴァン・ヘフリンのほうに思い入れが強かったのは、ジーン・アーサーのせいでしょうね。わが女(優)遍歴ときたら、ロンダ・フレミング、バージニア・メイヨ、ルス・ローマン、バーバラ・スタック……と姉御ふうの女ばかりだったので(なんとわびしい青春)、彼女の控えめな雰囲気にいかれたんだと思います。★永六輔が好きで天才だとさえ思っていて、淀川さんも大好きです。ともに私と同じ誕生日ということは関係なく(和田アキ子もそうなので)、キャラクターが好きなのです。つまらん個人情報をといわれそうなので、口直しに山下勇三・久米宏・筑紫哲也が熱烈なカープファンだという秘密もお教えします。「せきこえのどに六輔」という古い本を読んでいて知ったのですが、先刻ご承知でしたかね。
Commented by antsuan at 2005-05-23 06:53
いやいや知りませんでした。しっかり応援しなきゃ。(笑)
「シェーン」はどういう切り口で見ても素晴らしいですね。私の好きな女優はC.Cなんです。舌を噛みそうになるのでフルネームにしませんが・・。姉御のバート・ランカスターって感じがしませんか。
Commented by realutopia at 2006-06-15 11:39
何かに心底打ち込んだ人間の言葉は重いですね。映画をいかに噛み砕いて自分の血肉になるように鑑賞するか、そして制作者にとっては、そうした鑑賞者の期待にいかに応えるか・・・。淀川先生は、モノ作りの礎を教えてくれた偉大な先達です。