あんつぁんの風の吹くまま

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エンコミエンダを逃れた日本

 十六世紀のスペインによる南米侵略の植民地政策「エンコミエンダ」によって文明が抹殺された。

 明治以後に経験した日本の戦争は、どれもそれぞれの時代の日本人にとって大変なものだったが、世界的には文明・文化そのものを壊滅させられた民族も少なくない。世界の歴史から見れば、日本が経験した「野蛮」はそれほどのものではなかったとも言える。日本人に他者への根深い恨みや憎しみの感情が薄いのはそのためである。

 日下公人氏は「アメリカに頼らなくても大丈夫な日本へ」という本で、こう書いている。先の大戦で、日本人が玉砕したり、集団自決したり、特攻隊で散った理由は、日本が豊かな文化と文明を持っていて、悲惨な世界の歴史を知っていたからではないだろうか。長くなるがもう少し抜粋してみよう。

 第一次世界大戦終結後の世界秩序を決める会議、ベルサイユ講和会議で、我が国の代表・牧野伸顕は「あらゆる人種は平等である。人は人種によって差別されない」という「人種平等規約」を提案した。・・・牧野たち日本外交団は粘り強く説得を続け、あるいは新しい修正案を出すなど努力を傾け、それまで日本の提案に反対していた国々を徐々に賛成へと変えていった。
 日本は採決を希望し、挙手による採決が行われた。その結果は、日本の提案に賛成が十一、反対が五だった。ところが、議長国のウィルソン米大統領は、「ことが重大なので、全員一致でないかぎりは否決されたものとする」と宣言した。牧野は、「なぜか。これまでこの会議では各案件の採決は多数決だったではないか」と抗議したがーー全会一致という決まりはどこにもなかったーー、否決という結果が覆ることはなかった。
  ・・・
 日本の提案がウィルソンの一言で否決されたことは、当時の日本人を大いに落胆させた。アメリカ西海岸の日本人移民への迫害は依然として続き、この五年後に排日移民法は成立した。
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 そういう時代に父祖は生きたのである。
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 繰り返すが、日本が明治開国以後、国際社会において主張し続けたのは人種平等である。しかも白人に対して、決して諦めなかった。今や世界は人種平等を当たり前のように追求するようになったが、その口火を切り、大きな炎としたのは日本であることをわれわれは忘れてはならない。そして、ここで充分自覚して欲しいのは、「白人絶対」の時代を終わらせたのは、すべて日本単独の力だということである。
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 しかし残念ながら、日本がそれ(人種差別撤廃)を達成したことを祝福した他の有色人種は少なく、またそれを笑顔で迎えた白人の国はなかった。前者からは嫉妬を買い、後者からは不快感と敵意を浴びせられた。それでも有色人種の誰かが立ち上がって、実力で打ち破らないかぎり人種差別は終わらなかったのである。

       ◇     ◇     ◇

 前々から私は、日本軍ほど戦時国際法を遵守した軍隊はないと主張して来ましたが、この本を読んでますますその意を強くしました。さらに先祖の尊い命によって、他者への恨みや憎しみを持つ必要がなかった事に、深く感謝したいと思うのです。
by antsuan | 2007-04-05 05:34 | 思想・瞑想・時代考証 | Trackback | Comments(4)
Commented by saheizi-inokori at 2007-04-05 10:43
そのアメリカも自らに関係のないところでは民族自決とか自由平等を主張したし、日本もアイヌ差別をしました。まことに罪深きものは”国家”。
かといって国家がなければ人々の安全も保障されない。永遠の矛盾なのでしょうか?
Commented by antsuan at 2007-04-05 11:32
・民族そのものが抹殺され、文明が破壊されてきた世界の歴史を振り返ると、国家、国家と論じていられる時代はつくづく平和な時なのだなと思うと共に、われわれ日本人は祖先に対して誇りを持っていいと感ぜざるを得ません。パクスヤポニカは世界平和の輝ける指標のように思うのですが、それを言うと思い上がりと非難されるかも知れません。
Commented by gabefunyaa at 2007-04-06 14:57
あ!祖父が書いたものと思われるアメリカ西海岸の日本人移民への迫害についての著書(カリフォルニア州に住んでいました)を古本屋のインターネット検索で見つけていながらまだ注文出していない。
私が、アメリカという国のあり方を好きになれないのには、移民だった祖父(父親たちもアメリカ生まれです)の存在があるのかもしれません。
Commented by antsuan at 2007-04-06 18:27
・gabefunyaaさん、その本、日本語で書かれているのでしたら是非読んでみたいです。紹介して下さい。
人種平等は当たり前だったのではない、差別などという生易しいものではない迫害に耐えて、人種差別の壁を突き崩した我が祖先を誇りにしたいのです。