あんつぁんの風の吹くまま

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司馬遼太郎の「この国」

 たまたま私の読んだ時が一致していたという偶然なのだが、関西大学名誉教授の谷沢永一氏が、月刊ボイス三月号で、日下公人氏の「よく考えてみると、日本の未来はこうなります。」において、司馬遼太郎の『この国』という言い方は日本人と距離を置いているというのは、当てこすりであると批判している。

 つまり谷沢氏の云うには、司馬遼太郎氏はけっして日本国民との間に距離を置いていたのではなく、母国への執着を暗示した呼称であったと、その言葉を使った標題のいきさつを述べているのだ。

 どちらも間違っていないと思う。司馬遼太郎氏の本には、タイムマシンでその時代に行って見て来たかの様な作品が多く、作者、司馬遼太郎の視点を明確にした書き方をしているので読者としても冷めた目で読んでしまうところがある。つぎに、司馬遼太郎の作品には日本国礼賛のものが多数あることから、決して異邦人的な見方ではないこともはっきりしている。

 現に、日下氏も大阪外語学校出身の司馬氏には「この国」という資格があると本の中でも認めているのであって、谷沢氏の批判の方が当てこすりに近いような気がする。

 いずれにしても、魚住氏のような普通のジャーナリストから見たこの国と、会社役員を経験している評論家日下氏のこの国、そして谷沢氏の大学文学部教授としてのこの国では、立場の違いはあっても、わが国への思い入れそのものに違いはないと読み取ることが出来る。

 そして日本が否が応でも世界を導く時代においては、"わが国"と呼んだ方が国際関係において理解されやすいことも間違いのない事実と思う。
by antsuan | 2007-02-20 22:27 | 思想・瞑想・時代考証 | Comments(0)