あんつぁんの風の吹くまま

ブログトップ | ログイン

問われ人の知能技術

 近頃の銀座は、どうやら本当に不景気を脱して、かなり景気の良い話が聞こえてきているようだ。しかしバブルが弾けて以後、料亭は次々と消えていき、江戸時代の女達が持っていた「問われ人の知能技術」を接待技術として細々と受け継いできた花柳界は今や風前の灯である。

 拓殖大学の呉 善花(お そんふぁ)教授がそのことについて、「男と女の『いき』な遊び(赤坂芸者と銀座のホステスに日本の遊興文化を学ぶ)」と題して、月刊「ボイス」に載せているので掻い摘んで述べてみたい。

   ---------------------------------------------------------------
 一九八三年に来日した私も、長らく芸者について、かつての西洋人のように無知からの誤解に満ちた認識を持っていた。・・・韓国の席でも諸外国の酒場でも、女が酒食の接待にあたる場ではおよそ「下品なものに墜落するに違いない」のが一般的だからである。
 男達の主導のもとに、芸者を迎えての宴席に同席したり、ホステスのいるクラブへ行くことは何回か体験している。それらの場にいていつも不思議に思っていたのは、男女双方が相手に向けて一定の性的魅力(男ぶりや女ぶり)を表現しながらも、最後まで性的魅力の表現のままであり続け、そこから先へはけっして進もうとはしないことである。しかもその性的魅力の表現の行き交いそのものが、まるでゲームであるかのように楽しまれているのだ。
 そこにはある一線のようなものが引かれていて、そこをけっして越えてはならないルールがあるように思われた。一流といわれる場であるほど、それをはっきりと感じることができた。・・・
 ・・・「問われ人の知能技術」とは、問うてくる(言い寄ってくる)男たちに対して、豊かなセンスを持っての巧みな受け答えの技術、あるいは男たちに問い掛けさせずにはおかない優美さなどの立ち居振る舞いの技術、男たちの真意の所在や男なりを判断する能力などのことであるようだ。・・・ただ異なるのは、芸者やホステスでは、それが本当の恋愛ではない一種の疑似恋愛における技術であることだ。・・・江戸時代は女の社会的地位は男より低かったかも知れない。男にとって都合のよい道徳が女たちを圧迫していたかも知れない。・・・性を異にする人間同士が付き合う時のマナーについては、近代人が想像する以上にしっかり習慣化されていた時代だった。
  [江戸時代の「いき」の精神]
 そうした花柳界で守られてきた習俗・習慣には、江戸時代の人々のあいだに広く行き渡っていたといわれる「いき」の精神が深く関与している。・・・「いき」の基調とされる「媚態」は、もの欲しそうに媚びを売る態度なのではない。男女合一が成就するかも知れないし、しないかも知れないという、二つの可能性(二元的可能性)を持つ緊張関係をけっして壊すことなく、どこまでも持続させていこうとする態度のことである。そして、その緊張関係の持続それ自体を喜び楽しむのが「いき」な遊びというものなのだ。
「『いき』は恋の束縛に超越した自由なる浮気心」であり、「『離れぬ中』となってしまった時には既に『いき』の境地を遠く去っている」のである。・・
 こうした「いき」の精神が生きつづけてきたからこそ、現代にまで至る一種の疑似恋愛、恋愛ゲームのような世界を楽しむ遊びの文化が成り立ってきた。・・・
   --------------------------------------------------------------

 それはヨーロッパよりも何世紀も早く、源氏物語に象徴されるように、平安の時代には既に花開き生きつづけてきた男女の遊興文化なのだ。

 「問われ人の知能技術」を文化にまで高めた日本だが、武士道と同じく、その日本男女の「いき」の精神が消失しようとしている。
by antsuan | 2006-12-13 18:36 | 思想・瞑想・時代考証 | Trackback(1) | Comments(0)
トラックバックURL : http://antsuan.exblog.jp/tb/4369939
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Tracked from 韓国メディアに物申す at 2006-12-19 03:04
タイトル : 韓国人留学生の話
今回は、ある本の紹介をしたいと思います。始めに行っておきますが、この本は韓国のスターなどのように光の当たる場所の話ではなく、一介の韓国人留学生であった著者が経験した事などを書き綴ったルポエッセイです。韓国メディアが触れられないような内容もあり、著者は日本に帰化するしかないような状態となってしまったほどのようです。タイトルは「スカートの風―日本永住をめざす韓国の女たち」(呉善花 著)です。内容としては、27歳で韓国から留学生として来日した著者。しかし日本人の曖昧な笑顔や態度、韓国人には考えられぬ不思議な...... more