あんつぁんの風の吹くまま

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行政の為すべき仕事とは何かを考えよ

 JR西日本、福知山線の事故は企業の組織としての問題点をさらけ出した格好になったが、政府系企業として元々組織が大きく体質改善をするのは難しい面も合ったのだろう。社長は責任を一身に受け止めて必死に対応していると思う。その点においては何処かの私鉄のオーナーと全然違っていて評価すべきだ。遺族関係者が感情的になるのはわかるが、他の第三者がそれに便乗して非難することは避けるべきである。

 安全という言葉を一番軽視しているのは企業ではなく国家なのだ。阪神淡路大震災の時の政府の対応の酷さをもう一度思い浮かべる絶好の良い機会であると思う。あの震災において、近くの自衛隊が命令が出ないために出動しなかったことは今でも語り草になっているが、これとて先の津波で有名になった昔の稲むらの火の教訓は何処にも活かされていないことが分かるだろう。毎年九月一日にやっている防災訓練が全く無意味だったことの責任を誰がとっただろうか。国家が安全に対して責任をとらないとどうなるか、其の見本が今回の事件ではないだろうか。

 表には出ていないが、公的組織が安全を軽視している事例には事欠かない。医療機関においても民間であれば、経営上安全に対する配慮についてはある程度線引きをせざるを得ないのだが、阪神淡路大震災の後に建てられたある公立大学病院について云うと、ものすごく立派でデカイ非常用発電装置が付いているそうだ。しかし其の発電室は地下三階にあり、傍には川が流れている。しかも財政上の理由でこの発電設備の燃料は二時間しか持たないと云われている。災害時の拠点病院である施設の発電能力がたった二時間とは!!さらに川が決壊したら地下三階は水浸しになることは誰の目にも明らかだ。まだまだある。この建物の照明器具や備品は殆ど特注品で出来ていて規格品のものは殆ど無いらしい。つまり、災害で壊れたりしてもスグには備品を取り寄せ出来ないということなのだ。戦艦大和の間違いを繰り返しているとしか言い様がない建物なのだ。

 おまけにこういう話もある。其の大学病院に併設された看護学校で急患が出て救急車を呼んだ。ところが、そこには大学病院から講師として現役の医師がいたのである。其のことに気が付かない学校関係者の対応も問題なのだが、更には駆けつけた救急隊がどうしたかというと、隣の建物が大学病院であるにも関わらず、規定通り救急車に患者を乗せ、目の前の道路が一方通行であったがために、次の交差点まで行ってぐるっと回ってきてから病院へ患者を収容したのである。危機管理の最前線にいる救急隊の規定からしてこうなのだ。事故が起こったら笑い事では済まされないことばかりだ。
 
 もう一つ、今から三十年以上も前のことだから改善されていると思うが、海上自衛隊の落水者救助訓練の実態を披露しよう。私の乗っていた艦は司令官の乗っている旗艦だったので規定通りの救助訓練をやっていた。其の規定が振るっている。護衛艦の行き足が完全に止まってから救助用の小型船を下ろして助けに行くことになっている。艦船の行き足つまりスピードが完全に止まるまでどれだけ時間が掛かるかまるっきり分かっていない者が、落水者のことなど全然考えないで作った規則なのだ。
 
 どんな時にでも規則を守らないと罰せられるから平然とおかしなことをやる。今回の事故でも、非番のものが緊急であろうと出勤したら、労働基準法に照らして後で休暇を与えなければならない。総動員させた場合どうやって運休させずに職員に休暇を与えることが出来るというのだ。はっきり言って災害時に規則を守れということ自体が間違っている。
 
 もっとひどい事には、運輸大臣は新しい安全装置を付けた車両でないと運行再開を認めないと言っているらしい。何を戯けたことを!本当に悲しくなってくる。其れより市民の生活に影響が出ているのを回避するのが先ではないか。自衛隊を出動させて復旧を急ぎ、安全対策には運輸省の係官を運転室に同乗させればよい。直ぐに処置する事を危機管理というのだ。
 
 確かに今回の事故は人災であ。しかし、これまでの対応を見てみるとJR西日本を責めるよりも迅速に対応しない行政を責めるべきであろう。厳しい規制を作っても意味がないし其れは立法の問題である。行政は市民の安全ために素早く行動する責務がある。いつまでも異常事態を続けることが異常なのだ。右左あんつぁんとしてはマスコミがそこに視点をもって行かないことに疑念を感じる。
by antsuan | 2005-05-07 00:44 | 思想・瞑想・時代考証 | Trackback | Comments(4)
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Commented by falls_niagara at 2005-05-07 01:11
マスコミの視点も感情的な感じがします。新聞やテレビはわかりませんが、ネットの記事を書いている人は 一時的な期間で流れていく記事に対してものすごく稚拙な考察で感情を煽っているようにも見えます。
乗り合わせた運転士が通常どうり勤務したことが問題になったりしていましたが、問題はその運転士個人ではなく、組織のあり方だと思います。上司に電話して、指示とは違う自分の判断で救助をし、そのために自分の運転予定の列車に支障が出たら、、、また自分も草むしりなどの見せしめをしなくてはならないかも知れないのです。人道に照らして。。。と怒る気持ちは当然ながら、こんな事件で一個人を責めてどうするのかとも思います。
 おっしゃるとおりだと思います。
 今の国の判断がどうなのかは、ネット情報だけで判断しかねますが、感情論先行では解決はますます難しくなります。 運転士やボーリングに行った一個人だけに注目していては、一番悪い部分がさらに見えにくくなるとも思います。
Commented by antsuan at 2005-05-07 07:31
falls_niagaraさん、いつもお立ち寄り下さり有り難う御座います。今迄、分刻みのいや秒刻みのダイヤの正確性をお国柄として自慢していた事がJRにとって外圧として作用していたと思います。ブログがジャーナリズムとして機能し始めたとしてもマスコミの力は絶大です。単に行政側の情報を発表するだけの機関になって欲しくありません。もう少し成熟して欲しいですね。
Commented by flight009 at 2005-05-07 11:55
あの社長は、これまでに信楽高原鉄道や、運転再開を急いで救急隊員が死亡した事故など、いくつもの事故を経験しており、今回の事故も、あの社長の下でこそおきた事故だと自分は考えています。

おっしゃることはごもっともですが、たとえば震災の自衛隊の例。
「近くの自衛隊が命令が出ないために出動しなかった」というのは、事実ではないようです。ほとんどの部隊は、近隣の非常事態という自衛隊法の規定や、訓練を名目にした偵察飛行などを行い、法律上可能なことはしていました。それでも、大部隊が展開できなかったのは、「兵庫県知事が」何を考えたのか出動要請を出さなかったからで、最終的には、自衛隊が県の防災担当者から半ば強引に取り付けたことは御存知だと思います。

それが、どういうわけか、兵庫県知事はあの災害のヒーローで、自衛隊はわりと悪者扱いされていたりするんですよね。

その根底には、「悪いのは国、民が被害者」という、非常にシンプルな考え方があると思っています。もうちっと違う見方があるんではないかと、読んで思いました。
Commented by antsuan at 2005-05-07 15:09
確かに、過去の反省を活かしていないのならば論外ですね。

私の隊員時代のナンセンスな規定を上げたように、自衛隊が悪いと言っている訳ではなく、緊急事態に対応できない無意味な規定を作り、迅速に行動させないホワイトカラー行政のお粗末さこそ、安全を軽視していると言いたいのです。

話は脱線するかもしれませんが、昔、三島由紀夫が自衛隊基地内で反乱を企てて割腹自殺をしましたが、こういう非常事態においても自衛隊主導ではなく、警視庁の指揮の下に事態は収拾されました。これで自衛隊は何も出来ない軍隊であることを世界に知らしめてしまったのです。私はそれで辞めました。国のため国民のために命を捧げたいと思っても其れをさせない軍隊なんて何になるのでしょう。