あんつぁんの風の吹くまま

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夜行列車での出会い

 帰省帰りの列車が不通になるのは今回が始めてではない。そのことは去年の「川の形態」に書いたので省略するが、東北では台風の大雨よりも梅雨の集中豪雨の方が怖いものだと認識している。

 今回の帰省は田舎から呼ばれる最後の機会かも知れなかったので、是非、家族全員で行きたかった。とはいえ、子供たちの夏休み前と云う事も有り、殆ど日帰りとも云える夜行列車の旅を計画したのだが、海と山とが迫っているところを走る羽越本線経由では無理があったようだ。

 しかし、もう七〜八年以上も前になるがその夜行列車「あけぼの」での人との出会いは忘れる事が出来ない。それは雪がまだ残っている三月下旬のことで、鉄道マニアになっていた長男に寝台列車と上野駅の雰囲気を味合わせてやろうとして企画した帰省の旅だった。

 小学四年になる長男と二年になる次男の三人でB寝台に乗り込んだのだが、出発時刻ぎりぎりになって空いている向かいの寝台に年配の男の人が乗り込んできた。我々はもう寝る支度をして殆ど毛布をかぶっていたのだけれども、その男の人のポリポリと煎餅をだべる音が気になって三人とも寝つかれずにガサゴソやっていた。それに気が付いたのだろう。男の人が子供に向かって、「お弁当を買う時間がなかったんだよ、すぐ食べ終わるからね」と、すまなそうに話しかけてきた。

 これが旅の楽しさなのだが、身なりのキチッとした紳士が狭い寝台でポリポリ煎餅をかじっている姿に何となく親近感を感じて、こちらもカーテンを越しに、何処から来て何処へ行くのか尋ねたところ、空路で福岡から羽田経由の秋田に帰る予定が、福岡からの便が遅れてしまい秋田行きの便に乗れず、羽田から急いでこの夜行列車に飛び乗ったのだと云う。その話しぶりから、どうやら出張と云うよりも学会帰りのようだった。

 私の勘は当たって、秋田にある大病院の外科の先生だった。親戚に秋田大学医学部の助教授をしていた人がいたのでそのことを話したところ、なんとその親戚の消息を私より詳しく知っているのでびっくりしてしまった。そこであらためて寝台の上と下で寝そべりながらの名刺の交換となったのである。

 その先生が煎餅ではなく饅頭をこっそり食べていたら、言葉を交わす出合いにはならなかっただろうと思うと、夜行列車の旅がことさら楽しい思い出となって私たちのこころに残っているのである。


 今回は慌ただしい日帰りの旅であったけれども、ちょっとだけ北上線のほっとゆだ駅舎にある温泉に入ってきた。旅はこれだから楽しい。
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by antsuan | 2006-07-23 00:01 | 身の回り・思い出 | Comments(4)
Commented by hanaco at 2006-07-23 00:44 x
いろいろな出会いがあるのですね。だから、いいのかな。
私も、ブログを始めて、あちこちで、いろんな人にあってるような気がします。でも、本当に顔を合わせての出会いが一番かな。
antsuanさん、葉山から逗子に行く途中に、葉山工務店(だったかな?)の少し先、カーブのところに赤い看板の『アンの部屋』という一軒屋のお店があるのですが、ご存知ですか?私、大好きな店なんですよ。洋服やさんですが、コーヒーなども出しています。オーナーがほんわかとしたあったかい方です。
Commented by saheizi-inokori at 2006-07-23 08:36
ほっとゆだ、のようなホッとする話ですね。そんな出会いは結構あるのにこちらの心がささくれていると「うるさいなあ」のレベルで終わってしまう。いい温泉があっても邪魔な建物としか思わない。antsuanだから掬い上げた先生のひと言ですね。
Commented by antsuan at 2006-07-23 09:29
あの赤い看板のお店ですよね。あそこって昔からあったんですか?看板が出来たのは割と新しい気がします。
ブログって銀河鉄道999のようなものかも知れません。本当にいろんな人に出合えて楽しいです。
Commented by antsuan at 2006-07-23 09:38
長距離列車の旅がそうさせるのではないかと思います。「連絡船の女」http://antsuan.exblog.jp/216138/でも、然りげない出会いに心を打たれた事がありました。