あんつぁんの風の吹くまま

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錆びた祖国の土の上

堀口大學詩集
  月かげの虹 より
                
  錆びた祖国の土の上

   戦争のあの悪夢が醒めて
   まやかしの千の希望が消えたあと
   (握った砂のあいだから
   こぼれる砂のあの気持ち!)
   寒気と飢餓のどん底で
   宇宙の外に締め出され
   べとつく闇に包まれて
   苦い時間をなめ続け
   十年僕らは活きてきた
   錆びた祖国の土の上

   ああ 祖国!
   敗戦に毒害される時までは
   少しは増しな国だった
   それはまだ〈わが国〉だった
   内灘も 砂川も 〈杭〉を打たずに
   測量出来た

   兄弟よ その頃の祖国の土を思い出せ!
   (錆びた祖国の土の上)
   ありあまる花弁さながら
   花園に蝶が舞ってたあの土を
   思い出せ 思い出せ 兄弟よ
   (錆びた祖国の土の上!)

   いま 砂川の里芋は
   怒りに凍てて石と化る
   内灘沖の魚族たち
   恨みを骨の髄に知る
   昼もそうしてまた夜も
   我らの空を耕して
   ついに休まぬあのものは
   星のしるしの飛行機は
   大釜の億兆倍も強力な
   核爆発によるという
   〈死〉の取り入れの準備する!
   銀河は三途の川なのか?
   錆びた祖国の土の上!
by antsuan | 2006-06-10 21:57 | 思想・瞑想・時代考証 | Comments(3)
Commented by molamola-manbow at 2006-06-11 11:18
はじめまして、梟さんのお仲間は、みなさん大層な読書家でいらっしゃる。老眼が進んで以来、本とは疎遠な毎日で、凄いなあと舌を巻く毎日です。
葉山(一色海岸)は学生時代の4年間、夏になると友人の家に入り浸って過ごした思い出の地です。友人の手作りの木製ディンギー、御用邸近に置いてあるんですよ。夏は浜から出せませんが・・・・・。
右左あんつぁん、「ん、ヨット用語にそんなのあったかな?」と、考え込んでしまいました。


Commented by saheizi-inokori at 2006-06-11 23:05
「悲劇週間」で扱われている飛行機が限りない憧れの対象となっていたのに、この詩では「死の取り入れの準備をする」ものとなってしまっている!堀口の痛恨。
Commented by antsuan at 2006-06-12 07:56
「月かげの虹」という詩集は非売品なのですが、それだけに堀口大學の心の奥深いところも覗かせているような気がするのです。