あんつぁんの風の吹くまま

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作家は皆、出生の秘密に葛藤している

 作家は皆、出生の秘密の葛藤がある。「出生の秘密」という本を書いた三浦雅士へのインタビュー記事がある本に載っていました。

 夏目漱石は幼い頃に里子に出されて、その幼児体験から母親との関係に悩んでいたというものです。芥川龍之介も実母と継母の四人の母を持っています。江藤淳も自殺したのは妻への愛ばかりではなく、実は母の問題が潜んでいるという話です。

 人は皆この世に生まれてきた時の記憶がありません。これは実に神秘な事だと思うのです。だから誰しも人は出生の経緯を知りたいと思うのでしょう。望まれてこの世に産まれてきたのか、偶然に産まれてきたのか、あるいは仕方なく産まれてしまった子なのかは、その人が活きる意欲を持ち続けるかどうかに大きな影響を及ぼす事は違いありません。

 自分の出生の秘密を知りたいがために母と父の「関係」を知りたいと思う。どうやらそれが歴史を知りたいと思う原動力になり、学問が栄える理由らしいのです。従って三浦氏は文学があらゆる学問の中心であると言っています。実は、でんでんむしさんのブログを読んでいて、この辺はなるほどなるほどと頷けるのです。

 宇宙の起源を探る研究も、神を求める信仰も、人が自分の出生の秘密を知りたいという神秘的な欲求の現れといって良いのでしょう。つまり、子が母との絆を求めるという事は普遍的なものであって、これが本当の「愛」と云うものではないかと思うのです。イエス・キリストが「神の愛」を説くのも出生の秘密があるからではないでしょうか。

 もうじきクリスマスがやってきます。商業主義に汚れてしまった感があるクリスマスですが、こんなことを考えて過ごすのもまた落つなものではないでしょうか。
by antsuan | 2005-12-15 07:49 | 思想・瞑想・時代考証 | Comments(0)