あんつぁんの風の吹くまま

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クリスマスは横浜で


 十二月も二十日を過ぎて、街中ではあちこちでジングルベルやクリスマスソングが流れている事でしょう。しかし、思い起こせば、昔のクリスマスシーズンの横浜は、やはり他とちょっと違った雰囲気があったように思います。

 本牧に米軍基地があった頃は、横浜は未だ立派な港町で、異国情緒豊かな横文字のネオンサインが輝く街でした。伊勢佐木町通りの入り口にある不二家ではローストチキンの美味しいにおいが漂い、その近くの有隣堂書店にはクリスマスカードがいっぱい並べられていました。そして、あちこちにあった音楽喫茶には恋人たちが集まっていました。

 黒沢明監督の「天国と地獄」をみれば、その雰囲気がよく判ると思いますが、昼も夜も賑やかな繁華街には、男と女の人情が絡み合って、港町独特の、切ない行きずりの人生を漂わせていました。そして通りを一本外れると、どや街の真っ暗な全く違う世界がありました。

 しかし、そここそがわたしの中学高校時代の世界だったのです。未だ、生活の苦しみを背負う必要もなかった、しかし、ベトナム戦争や、七十年安保の騒ぎが伝わってきた、不安な青春の一時を過ごした街、それが横浜なのです。

 その横浜もすっかり変わってしまいました。「みなとみらい」が出来、地下鉄が通り、あの賑やかだった伊勢佐木町界隈はすっかり寂れてしまいました。中華街も昔ほどの活気はないようです。元町の入り口にあったクレープ屋さんは未だやっているでしょうか。

 二年前まで流行っていたバー「ブログ」の客はどうしているでしょう。あのママさんも元気にしているだろうか。そんなふうに思いに耽っていると、やっぱり、クリスマスの夜は横浜で過ごしたくなります。たとえ誰もいなくなっても、ジュークボックスにありったけのコインを入れて、昔の曲を聴きながらグラスを傾けると、きっと、汽笛の音が聞こえてくるような気がします。
by antsuan | 2010-12-21 22:09 | 身の回り・思い出 | Trackback | Comments(6)
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Commented by mimizu-1001 at 2010-12-21 23:38
♪ 伊勢崎あたりの 灯りが消ぃぃえるぅぅ

二年前、メモを渡してくれたのはたしかに女性でしたが、いつもカウンターの端の方に座っていた目立たないお客さんだったんですよ(笑)

そうそう、あのバー、何度か名前を変えながら細々と続いていたようですが、そろそろ閉店かもしれませんよ。
人気者だったワンちゃんもいなくなっちゃったし。
Commented by Emitan at 2010-12-21 23:50 x
川の流れは同じ様に見えます。でも其処に流れている水は全く別な水なのです。時とすれば、流れが変わって、其処には川は無くなって違う世界が現れたり、常に廻りは変化している様です。あの楽しかった仲間:永遠の仲間だと信じて居たが、今此処には彼らは居ない!又違った喜びに気移りしてしまっている。あの頃の町とはもう違って居る。元に戻る事は在り得ない!絶対と言えるのは誰もが一度は死ぬと言う事かな?汽笛の音だって、蒸気機関車のそれとは趣きが変わって軽く成って居る。そう!前を向いて行くしか無い!後ろを見ても・・・・・
Commented by shinn-lily at 2010-12-22 00:06
子供の頃、横浜は異国でした。
中華街にいくために停めた車は、よくいたずらをされました。
なにか怖いけどおもしろそうなところ、横浜はわたしたち子供にとってはそういうところでした。

最近はみなとみらいにばかり、仕事だからしかたがないけれど、
よくよくかんがえれば、あそこは横浜ではない。
横浜という名前を使わないでくれただけ、良心的です。
Commented by antsuan at 2010-12-22 17:28
・みみずすましさん、そうだったんですか。わたしは奥のテーブルの落語好きの方からだとばかり思っていました。

ジュークボックスが壊れないかぎり、店はやってて欲しいと思っています。
Commented by antsuan at 2010-12-22 17:29
・Emitanさん、船の汽笛が聴こえなくっちゃ、もう港町とはいえないと思いますよ。
でもね、また寄ってみたくなる街、それが横浜なんですよ。わたしにとってはね。
Commented by antsuan at 2010-12-22 17:29
・リリーさん、クリスマスの夜の横浜は、喧騒の中に妙な静寂があって、汽笛が哀愁をそそるのです。
そう、「望郷」のペペル・モコのように。