あんつぁんの風の吹くまま

ブログトップ | ログイン

有識者に祟りあれ

  文藝春秋七月号 一学究の救国論「日本国民に告ぐ」(藤原正彦)より、抜粋
 アジアの小さな島国日本は、帝国主義の荒波の真只中で、ほとんど不可能ともいえる独立自尊を決意した。これがすべてであった。この独立自尊を守るため、二千年近い歴史の中で、海外出兵は白村江の戦いと朝鮮出兵だけという、また江戸時代には二百六十年の完全平和を築くという離れ業をやってのけた。世界でも際立った平和愛好国家は、帝国主義の荒波に乗るしか他なかった。荒波に抗して呑みこまれ粉々に砕け散るよりは、荒波に上手に乗るしか他に道はなかったのである。
 過去の出来事を、当時の視点でなく、現代の視点で批判したりするのは無意味なことだ。十九世紀までの人類社会を、人間の平等すらなかったひどい時代と否定してみても何も生まれないのと同様だ。帝国主義は現在の視点から見れば、無論、卑劣な、恥ずべきものである。したがってこの観点からは、日本も他の列強がそれぞれの征服地でしたごとく、朝鮮や中国の人民に言語同断の振舞いをし甚大な迷惑をかけたことになる。弱肉強食は帝国主義時代の唯一の国際ルールだったとは言え、自省と遺憾の念を持つべきなのは当然である。
 しかし人間はその時代のルールで精一杯頑張って生きるしかなく、未来のルールで生きる訳にはいかない。すべての列強と同じ過ちを日本も犯してしまったのは仕方がないこととしか言いようがない。一方、この帝国主義の荒波の中で、日本人はそれぞれの時代の最強国ロシアそしてアメリカに、独立自尊を賭け身を挺して挑むという民族の高貴な決意を示した。無謀にもロシアとアメリカに挑んだことは、別の視座から見ると、日本の救いでもある。日本の基本姿勢が他の列強と全く違い、弱肉強食、すなわち弱いものいじめによる国益追求、という恥ずべきものでなくあくまで独立自尊にあった、ということの証左にもなっているからである。そして日本人は、これらの大敵との戦いの各所で、民族の精華とも言うべき自己犠牲、惻隠、堅忍不抜、勇猛果敢などの精神を十二分に発揮したのである。

 日本は怨霊文化の国だ。文藝春秋七月号で藤原正彦お茶の水女子大学名誉教授の書いた一学究の救国論「日本国民に告ぐ」の歴史認識について論評せず、黙殺する有識者には祟りがあるだろう。そう言いたいほど、この論文には日本の近代史が正確に書かれている。

 しかし、我が国の教育者、政治家、そして報道関係者がこれを受け入れるには、それぞれの既得権益を放棄しなければならないから、無理なことであろう。

 とはいえ、日本は愚かな戦争をしアジアの人々に迷惑をかけたとか、日本は悪い国だったとか、戦後の教育で教わったことを真面目に信じている人々は、ぜひ、この論文を読んで欲しい。この論文の評価が諸外国から逆輸入されるようでは、我が国は救われない。
by antsuan | 2010-08-21 23:22 | 思想・瞑想・時代考証 | Trackback | Comments(2)
トラックバックURL : http://antsuan.exblog.jp/tb/11783535
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by HOOP at 2010-08-21 23:53
さきほど、「西部邁ゼミナール」という番組を観たのですが、
結語はほぼ同じでしたね。
面白い番組が、ちゃんと制作されているのですから、
まだまだ捨てたもんじゃない。
Commented by antsuan at 2010-08-22 07:09
・ローカルな放送局でも、こういう正しい歴史認識が報道されるようになってきたことは、確かに希望が持てますね。